アトリエムーン美術教室講師の滝沢直樹です。どんな人が何を考えて講師をしているのか?詳しく知りたい方はご覧ください。ちょっと長いお話です。
高校在学中に油彩画家・井田淳一先生の美術科の授業に出会い、美術の世界の素晴らしさを知りました。日大芸術学部在学中は建畠覚造先生と土谷武先生の知的でストイックな創作活動を目の当たりにして、驚きと興奮で世界観がひっくり返ってしまったみたいに感じました。土谷武先生と建畠覚造先生は、学生が自分の感性と考えで創作活動を組み立てるために特別な指導方法を用意してくださっていたのですが、当時の日大芸術学部は、在学中から世界的に活躍していた剣持和夫さんや山本衛士さんがアトリエに出入りしていて、対等に話をしてくださっていましたし、仲間たちと銀座や神田の画廊に行けば、船越桂さんや北郷悟さんが笑顔で対等に接してくださって、誰もが、自分が美術の世界の中心にいるような気分になってしまう時代だったと思います。有名デパートのウインドウを飾るディスプレイや有名な監督の映画のセットを作る仕事が当たり前のように学生であった当時の自分にさえも(もちろん下請けですが)回していただけていました。大学を離れて(さぼって)色々な創作活動を経験させていただく機会が度々ありました。そのまま大学に戻らないでアルバイトを続ける学生も大勢いたように記憶しています。バブルの終わり頃で、一番キラキラしていた頃だったのでしょう。楽しい思い出という事だけではなくて、積極的な性格でありさえすれば、色々な経験ができる素晴らしい環境だったのは確かですが、落ち着いて研究に打ち込むには賑やか過ぎて、浮き足立ってしまっていたとおもいます。
卒業制作では、2年がかりで考えた仮説を実験するような制作をしましたので、先生方や先輩達から暖かい評価と応援をいただきました。大学在学中からコンクールや公募展での作品発表をする学生が主流でしたが、大学入学と同時に抽象造形に傾倒してゆき、土谷武先生や建畠覚造先生の指導をいただきながら、自分なりの仮説で実験的な創作活動をするうちに、意外なことに結局は具象的表現に結果を求めて行くようになり、ちょっとへんてこで実験的な具象表現の面白さに魅せられて、やってみたいことばかりがたくさんあって、作品発表活動をおろそかにするようになってゆきました。幸いにして当時の日大芸術学部には具象彫刻家の加藤昭男先生と鈴木実先生が講師で指導に当たられていましたので、卒業後に鈴木実先生の個人アシスタントとして働かせていただきながら、自分の仮説に沿った創作の実験を継続させていただくことができました。鈴木実先生のアシスタントをさせていただいていた頃も、まだ華やかな時代で、鈴木実先生のもとには野外彫刻展や美術館からの依頼が沢山あって、素晴らしい創作のお手伝いを7年半もの間毎日させて頂きました。アシスタントとして尊敬する他者に成り切って考え、創作する事が自分の性格に合っていたようで、楽しくて夢中で作らせて頂いていました。仮説を立てて実験するスタイルをアシスタントの仕事でも実践していたので、鈴木実先生にとっても、面白味のあるアシスタントだったのでしょう。色々な仕事を任せていただけるようになって充実していましたし、色々な技術や造形論理を学ばせて頂きました。この頃には自分の作品発表よりもアシスタントの仕事にやり甲斐を感じて、人生の方向がはっきしたと感じました。プロのアシスタントとしてやって行くなら、商業美術の世界で、創作活動をアシストする仕事をしようと決めて、ジュエリーとアクセサリーのメーカーで原型制作の仕事に就きました。その後は技術系の部署に異動して、個人の作家さんやメーカーさんの創作のお手伝いを技術面でアシストする仕事に夢中になって、あっと言う間に20数年経ちました。思いもよらない不思議な企画に沿った製品を実現するために、いつも新たに色々な方法を試し続ける仕事に恵まれてラッキーだったと思います。
2017年3月末に退職した時点で、技術部門の責任者と工場長を兼任していました。
これからアトリエムーン美術教室での授業で、今までに培ってきた技術と経験を生かして、 これから人生をスタートする子供達の心の中に、豊かな世界観が芽生え構築して行くことのお手伝いをさせて頂き、 生徒さんの人生を豊かにするような創作活動をアシストする為に役立ることが出来ると思い、とても楽しみです。